請負契約で開発を行っているITベンダーに従事している僕にとって、
顧客満足度を上げる
と言うことは、
お客様の言うとおりのシステムを期限内・費用内で納品することだ、
と思っている時期がありました。
クライアントの要望は絶対的なものであり、違和感を感じたとしても、
「エンドユーザーが求めていること」=「仕様」
であり、そこから外れている仕様は
「求めていないこと」=「不具合」
ということになります。
PMはお客様の要望をヒアリングするための方法論を学び、
SEはそのヒアリングした結果を仕様として、
漏れなく体系化し文書化する方法に苦心し、
PGはその仕様通りに動くものを作る、
が当たり前という環境でした。
その後、パッケージとしてシステムを横展開するようになると、
その方法論はまったく変わってきますが、
それに気づくのにはかなりの発想の転換が必要でした。
それまでの方法論に従ってしまうと、パッケージの機能にないクライアントの要望は
カスタマイズをして対応と言うことになりますが、
それは他のクライアントにとっては使いづらいものになる可能性が高い、
と言うことにはその環境で育ってきたSE・PMには
なかなか気づくことができません。
この「コミック版 100円のコーラを1000円で売る方法」を手にとったのは、
勿論ベストセラーになっていた本がコミックになっていて読みやすそう、
と言うこともありますが、
マーケティングの根本をもう一度一から学び直してみたい
という感情もあったのかもしれません。
マーケティングを全く知らない、でもマーケティングの考え方を
体系的に・簡単に知りたい、と思っていた僕にはぴったりの本でした。
事業の定義と顧客中心主義
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企業が存続できるのは顧客がその企業に対して対価を払ってくれるから、であり、事業の定義は顧客がどう考えているか、を意識するべきである。
製品やサービスが顧客の要望をすべて取り込んだ製品=顧客のことを考えている製品ではない。
顧客中心主義は「顧客の言いなり」になるだけでは、その顧客が気づいていないことに気づけず、顧客の潜在的な課題を見つけ、新たな価値を創造することにある。
顧客の要望に100%応えても0点
「顧客の言いなり」になって要望を100%くみ取っても、それは顧客の想像を超えることができていない。
他社製品も同じように要望をくみ取っているだけであれば、80%答えられているか90%答えられているかの比較や価格がどちらが安いかという、顧客の想定内での競争にしかならない。
ここに顧客の想像をこえる製品がライバルとして出現すると、顧客は別次元で物事を考えるようになる。
それが「顧客が感じた価値 – 事前期待値 = 顧客満足」という式である。
これまでの製品では事前期待値を超えることは決してできないため、いくら頑張っても顧客満足は0点以下にしかならないのである。
バリュープロポジション
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顧客が、自社の製品やサービスを買うのは、顧客が望んでいる価値のうち、他社が提供できていなくて自社が提供できている価値について対価を払うだけの価値を見出したからであり、それを「バリュープロポジション」とよぶ。
つまり、それ以外の価値は対価を払うだけの価値がないため、切り捨てても良い価値であるが、それができない製品が多くどれも似たり寄ったりになってしまう。
本書の中ではAppleTVとDVDプレーヤー、大型電気店と街中の電気屋さんなど大きくうなずくことのできる比喩が登場していました。
このバリュープロポジションを定義する最初の出発点が、ターゲットとなる顧客の定義と課題の定義である。これが顧客のニーズとマッチすれば潜在的な課題を掘り出すことができ、大きなビジネスチャンスとなる。
このコンセプトに則って、製品戦略、プロモーション戦略、チャネル戦略、価格戦略を練り上げるのがマーケティング戦略である。
価格競争から価値競争へ
真に顧客が求めているのは、他では得られない体験である。
確かに、商品がよければ売り出し直後でも定価でも欲しくなります。たとえは悪いですが、クリスマスシーズンになると、世のお父さんたちは子供が望むおもちゃをネットで定価以上で買い求めたりもしていますね。
ここに本書のタイトルとなっている、100円のコーラを1000円で売る方法の肝があります。
つまり、モノを売るのではなく、価値を売るということが現代の企業には求められている。
マーケティング・コミュニケーションとキャズム
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市場に対して、その価値をどう伝えるかはとても重要なマーケティング戦略である。
たとえ同じ価値を提供したとしても、伝え方によってニーズとして価値を見出さないからである。
また、その価値を伝えるタイミングも重要な戦略の一つである。顧客には「リスク歓迎型」と「リスク重視型」がある。
「リスク歓迎型」と「リスク重視型」の間には「キャズム」と呼ばれる大きく深い普及の谷があり、ここを超えられないと、一部のユーザーのみが価値を見出すだけで、その製品・サービスは消えてしまう。
本書では、最後に自社のバリュープロポジションに市場大手のマーケットリーダーが参入してきたところで締めくくられて、「to be continued」になっています。
170ページ程度の、しかも漫画なので、さらっと1時間くらいで
読み終えることができたが、
本書中には製品を売るのが営業では無いということを証明できる、
いくつもの事例が紹介され、主人公の 宮前 久美 が成長していく姿と共に
共感を覚える多くのことを短期間に吸収できたと思います。
ひるがえって、我が社の営業はと言うと・・・考えたくないなぁ。(笑)